12.8理科を勉強する意味と理由

更新日 2021年6月27日




「なぜ理科を勉強する必要があるの?」と思う人も多いのではないでしょうか?


理科が好きな人は『好きであること』自体が勉強する理由でいいと思います。

受験で強制されるせいで忘れがちになりますが、本来は好きなことを学ぶのが勉強です。

小さいころは色々なことについて「なんで?」と大人に聞いたのではないでしょうか?

知らないことについて興味を持ち、理解できたとき楽しいと思うのは自然なことと思います。





ですが理科を嫌いな人の方が多いと思います。

理科を嫌いだけれど、仕方なく勉強しなければならない状況の人のために、理科が何の役に立つのかを考えてみたいと思います。


今の世の中で生きていくには『理科』は切り離せない存在です。

薬、ダイエット商品、化粧品、車、電気、電波、パソコン、スマホ、電子レンジ、AI、観葉植物など、身の回りは『理科』だらけです。

ですが、理科的な知識がない人は、本当に意味のあるものとないものの見分けがつかずに、企業のパッケージや見出しに踊らされ、金銭的に損をします。

例えば『マイナスイオン』『コラーゲン』『水素水』なんて名前がつく商品がありますが、なぜ体にいいのか説明できますでしょうか?

ちょっと調べてみると、これらが理屈的には無理があったり、効果があったとしてもケタの違う量でないと意味がなかったりすることが分かると思います。


化学を研究している人はそういう商品を寒い目で見ていますが、『詳しくない人』は「なんか体にいいらしいよ!」と買ってしまいます。

物やサービスを売る企業の立場からすると、ターゲットにするのは『詳しい人』でなくて『詳しくない人』です。

(まちがっても企業は『マイナスイオン』『コラーゲン』『水素水』なんて商品を、東大の研究室の学生に売りには来ないでしょう)


こうした言葉は、企業が『詳しくない人』にモノを売るために創ったバズワードです。

簡単にいうと詳しくない人は、汚い企業のカモにされている、ということです。

長い目で気付かぬ内に、『詳しくない人』がお金をむしり取られています



ちょっと話がそれますが、『詳しくない人』がバズワードでお金を取られる例としてこんな話があります。

信じられない話ですが、2000年代のITバブルの時代には「会社名を変更して『IT』か『テクノロジー』という言葉をつければ株価が数倍になる」と言われました。

不動産会社にまで『テクノロジー』という名前がついていたほどです。

もちろん実態として企業価値は名前を変えたところで上がらないので、結果としてITバブルがはじけて多くの人が損をしたわけですが、それで世の中が学んだかと言えばそんなことはありません。

最近は「会社名に『AI』や『DX』や『ブロックチェーン』や『バイオ』という言葉をつければ株価が上がる」なんて言われています。

信じられない程多くの『詳しくない人』『詳しくない経営者』が、企業が作った『バズワード』にだまされるわけです。



もちろん、高校の理科はあくまで入口なので、こうしたジャンルの知識を完璧にカバーすることはできません。

ですが、化学、生物、物理の言葉を分かっているだけでも、商品の説明を読んでなんとなく理解できるようになりますし、学問としての感覚や規模感をつかんでおくだけでも「違和感」に気付くことができるようになります。

生活とは切り離せなくなってきた理科、そして今後数十年間でもっと生活に入り込んでくるであろう理科について、入口だけでも学んでおき、適切に付き合うことに「実利」はないでしょうか?

少なくとも安易にだまされるような『詳しくない人』になりたくないとは思いませんか?



次に少しスケールの大きな話をします。

よく考えると世の中が大きく変わるときは、いつも『理科』が大きな役割を果たしています。

土器、石器、火、稲作、鉄、火薬、鉄砲、石油、蒸気機関、自動車、飛行機、抗生物質、ラジオ、テレビ、原子力、IT、再生可能エネルギー、AI、DNA、バイオテクノロジーなど、挙げるとキリがありません。

歴史をひもとけば、理科が歴史の大きな転換点になっていることに気が付くはずです。

土器と火によって、人は食べ物を貯めたり調理できるようになりました。

稲作によって、人は初めて長期の貯蓄ができ、貯蓄の管理/分配が必要になったことから身分の差が生まれました。

鉄砲によって、人体としての力の差ではなく、技術の差によって戦争の勝ち負けが決まるようになりました。

石油と蒸気機関によって、人は人力以上のエネルギーを得ることができ、大規模な工場や車ができました。

原子力によって、人は莫大なエネルギーを得るとともに、初めて地球を壊すことも可能になりました。

AIによって、人は初めて「判断する」ということを人以外に任せるようになりかけています。


短期的に世界を動かすのは将軍や政治家かもしれませんが、長期的に大きな視点で見たときに世界を動かしているのはいつも理科です。

理科によって生活が変わり、理科によって国と国のパワーバランスも変わっていきます。


今から寿命がくるまでの約50年間で、こうした時代の大きな転換点になるような理科の発明がいくつも出てくると思います。

もしあなたが研究者になって、世界を変えるような発明をしてみたいと思ったなら、当然理科を学ぶべきです。

もしあなたが研究者にならなくても、世の中をひっくり返すような理科について、過度に恐れず、過度に信じすぎず、適切に使いこなすために、理科を学ぶことに意味はないでしょうか?



もし受験のせいで仕方がなく理科を勉強しなければならない状況としたら、どうせならちょっとした意味や理由を意識して勉強してみてはどうでしょうか?